過去の読んだ営業をテーマにした本
「世界は感情で動く 行動経済学から見る脳のトラップ」
営業1年目に上司が「営業マンは人の感情に敏感でなければならない」「人がどう考えるかを研究しなければいけない」と勧めてくださった本です。
30以上の具体例から、人間がどのように物事を考えるかが分かりやすく説明されています。
そしていかに人間が偏った判断をしているかも学ぶことが出来、この事実は営業をしていくうえですごく大事な気づきになりました。
この本は例えば鉛1キログラムと綿1キログラムどちらの方が重いですか?(当然同じ重さだが使われる言葉が選択を左右するという例)
その子の友達の父親がピストルを1丁持っていることを知った時と、その子の友達の家の庭にプールがあるのを知った時とどちらの方が安心していられるか?
(死亡率という統計でみれば銃弾よりも溺死が3倍近く高いのだが、ピストルという言葉の強さが判断を誤らせるという例)など読みながら、質問形式で実際に自分も錯覚を体感することができる構成になっているのが特徴です。
350ページ、30の実例の中で仕事中でも思い返せていたのは5~6個ほどですが、それだけでも営業する上でとても良い武器になりました。
この本を通して自分が実際に学び、役に立ったポイントは2つあります。
1つ目は相手に正しく思いを伝える大切さと難しさに気づけたことです。
自分が売り手として相手と接する際にもったいないのは相手のバイアスにより正しく伝わらないという事態です。
そして営業力の能力の中でも正しく伝わらないという事態を避けながら相手の期待値をコントロールする能力はかなり重要な能力として位置づけられると思います。
コントロールなのか言葉のレトリックなのか境目は曖昧なのですが、このハンバーガーには30%の脂肪が含まれると説明するか、このハンバーガーの70%には脂肪が含まれていないと説明するかによって伝わり方は大きく異なります。
冷静に考えれば同じことであり、2つとも同一のもので、原材料を変更したわけでもありません。
しかし言葉の響きが違うという所が大きなポイントであり、それが錯覚を誘発させます。
こうしたちょっとした言葉を普通の人よりも繊細に扱うワードセンス、そしてその感性を磨く努力と気遣いが聞く相手にプラスをもたらし、結果売り手である私達の売上につながります。
もう1つこの本を読んでいて良かったなと思うのが、自分が買い手であった場合です。
これはこの本を読んでいると実に大きな力を発揮します。
当然ビジネスは仕入れ値と売値の差分が自分の営業成績になりますので、いかに適正価格で仕入れられるかも営業成績を左右する大きなポイントとなります。
この本の知識さえあればアンカリング効果や利用可能性の法則(起きる頻度を統計数値ではなく思い起こしやすいかできめてしまう)などを駆使して売り手が言葉巧みに仕掛けているのを気付くことが出来るようになります。
これは本当に知っているかどうかの違いだけで、知ってさえいれば結構ピンとくるようになりました。
もちろん売り手もだますつもりはないと信じていますが、耳に心地よいトークを冷静に見極めるという習慣がこの本を通して身につけることが出来ます。
記憶の錯覚や評価の錯覚など、人間多かれ少なかれバイアスがかかって物事を見ますがまずはそうした事実を知ることがコミュニケーションの一歩であると学んだ本です。
最後に、
この本のタイトル通り世界は「感情」で動きます。
どれだけ良い商品提案をして、どれだけよいプレゼンが出来たとしても発表者本人である営業マンが先方の担当者に嫌われていればそれだけでバイアスがかかり自分よりも魅力の低いプレゼンをした他社に負けることもあります。
営業は人という言葉も良く聞きますが、相手が感情で判断する分、小さな約束もしっかり守り信頼関係を重ねながら、自分のプレゼンが正しく伝わる土壌を普段から作っておくという基本中の基本も改めて大事だなと感じさせられた本でした。
世界は感情で動く 行動経済学から見る脳のトラップ目次
はじめに―「脳のトラップ」を知ろう
パート1 まずは心の準備体操
パート2 あまりに人間的な脳
パート3 集団のなかでの困った判断
パート4 いざ、決断のとき
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