営業本マニアックス

法人営業やテレアポなど、さまざまな営業のテーマに関する本を取り上げ、おすすめのタイトルをリストアップしてゆきます。

【レビュー】なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか? フィリップ・デルブス・ブロートン 

フィリップ・デルブス・ブロートンさんの書いたなぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?を読んでみた。

 

なかなか手強い書物で、読むのにかなり時間がかかったが、営業いついての示唆に富む読む価値のあるよい本だった。

 

著者はオクスフォードを卒業後、デイリー・テレグラフの記者として勤め、その後ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得し、アップル、カウフマン財団に勤務した後、フリージャーナリストをしている人物。

 

本書の元々のタイトルは”The Art of the Sale”というもの。上記のような日本語タイトルとなったのは、前著の『ハーバード ビジネススクール―不幸な人間の製造工場』がベストセラーとなったこともあり、著者も訳者もハーバード出身であることから、狙って付けたことによるのだろう。

 

前著は読んだことがないが、今回気になって手に取ってみた。

 

全体として、アカデミックでは、あまり迫ることの出来ない人間の高度な営みとしての”営業”というものの、リアルなところを筋道を立てて、深く洞察している印象で、さすがという感じだった。

 

具体的には、古今東西のセールスのプロフェッショナルに迫りながら、彼らの行っている”営業”の実態に迫るという形式で、以下の章立てでできている。

 

序章 世界を動かしているのはセールスだ!

第1章 拒絶と失敗を受け入れる

第2章 ストーリーと共感力で売り込む

第3章 生まれつきか、経験か

第4章 教祖と信者

第5章 誰にでもチャンスはある

第6章 芸術作品を売るということ

第7章 仕事と自我を切り離す

第8章 複合的な才能

終章 ものを売る力と生きる力

 

モロッコの商人・アメリカのテレビ通販のプロ・このブログでも取り上げた日本生命の柴田和子さん・カーネギ・オグマンディーノ、・・・等々から今話題のドナルド・トランプ、果てはスティーブジョブス、イエスキリストまでの事例を使いながら、

 

・セールスとは何か

・セールスマンとはどんな存在か

・優秀なセールスマンに共通する資質があるとすれば、それは何か そうしたこと

 

が存分に書かれている。 以下、いくつか引用してみる。

 

p96 ・・・どの研究にも共通する最大の成功要因は、役割認識だった。セールスマンが自己の行為をどう受け止めているかが、売上に最も大きく影響していた。自分の行動とその理由を理解し、どんな見返りがあるか、また誰を喜ばせればいいかをはっきり認識しているセールスマンは成功していた。



p103 優秀なセールスマンを見つける難しさはここにある。高い共感力が必要だが、相手に共感しすぎて成約できないようでは困る。強い自我は欠かせないが、相手が何を欲しているのかを考えられる人間でなければならない。成約に持ち込む押しの強さは必要だが、押しが強すぎて相手を遠ざけてはいけない。相手に共感しすぎると、ただのいい人で終わってしまう。自我が強すぎると、行く先々で嫌われる。どちらも足りない人は、そもそもセールスに向かない。すべてを兼ね備えた人間がいれば、それこそ奇跡だ。



p119 レヴィンは、人間関係を築くには、「自然な会話」を重ねるにつきるという。そして、営業とは、物を売ることではなく、自分を売り込むことだと考えている。・・・お客様の夢を知るにはまず、その頭のなかに入り込まなくてはならない。共感力が必要なのだ。



p314 (オラクルの)エリソンのセールスマンとしての前向きさが夢を生かし続けたのだった。(セールスフォースの)ベニオフは、そこで「ラリー・エリソンの法則」を学んだ。常に理念を持ち続けること。情熱的であること。自信がなくてもあるように振る舞うこと。自分にいいようにものごとを捉えること。他人の意見に左右されないこと。未来のことでも、いま目の前にあるものとして見ること。そして、自分の力を信じること。



p320 (セールスフォースの最高顧客責任者)スティールは、セールスに魔法はないと言い切った。二つのことさえできればいいという。勤勉であることと、よく聞くことだ。テクノロジーを事業基盤とする企業でも、営業の基本はモロッコの市場と変わらない。「セールスマンをやる気にさせるのは、スリル、興奮、がけっぷちで生きる感覚、そして大きな契約を取る自分を想像することです。それは英雄のメンタリティなのです」とスティールは言った。



p355 少なくともセールスは真実との終わりなき対峙であり、自分自身と他者についての真実との対峙である。それは生々しく、居心地が悪く、他では滅多にないほど自分をさらけ出す仕事だ。この厳しい現実こそビジネススクールがビジネスというものを実際より残酷でないように描きたがり、営業を教えてることを忌み嫌っている理由かもしれない。



 

個人的には、上の引用にも出したが、セールスフォースのマークベニオフが作った営業の仕組みづくりの記述や、厳しい保険外交員の中で生き残るのは、楽観的な考え方が取れる人だった、というような調査結果について書かれた部分が特に印象に残った。

 

いずれにせよ手強いが何度も繰り返して読みたい一冊を見つけて嬉しく思っている。

 

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