著者は、広告業界の第一線で営業職として勤務するサラリーマン作家。
医師や弁護士、政治家をはじめ、大企業のCEOや大物芸能人など、総勢3,500名以上のクライアントと関わった経験がある。
その過程で、気づかいには損する気づかいと得する気づかいがあることを見出し、20年以上の研究により導き出した“気づかいの集大成”が本書の内容である。
「気づかいに才能は必要ありません」
著者は冒頭でそう断言している。
本書を読むことで、気づかいは勉学と同じく学んで身につけられるものだと実感できるはずだ。
本書ではありがちなNG例とともに、正しい気づかいの手法が事細かに31種紹介されている。
営業職に従事している人は勿論、日常生活の人付き合いでも大いに役立つ内容ばかりである。
今回は31種のケースから3つの例を抜粋して紹介していきたいと思う。
【scene5 話題のつくり方】
損する気づかい・「自分が何を話すか」ばかり考えている
得する気づかい・「相手が話したいこと」を引き出す
初対面の人と話しをする中で、あれこれと話題を持ち出すも話しが盛り上がらず気まずい沈黙が訪れる。
このような経験をした人は多いのではないかと思う。
なぜこのような気まずい空気を作り出してしまうのか。
それは、「自分が何を話すか」ばかり考えているからである。
本来、コミュニケーションは話すことよりも聞くことに注意を向けなければならないのだ。
理想とする割合の目安は、自分が話す=2割、相手の話しを聞く=8割だという。
では、どうしたら相手が8割も話してくれるのか。
本書では「相手が話したいことを引き出す3つの鉄板質問」が述べられているので紹介する。
①わらしべ質問
わらしべ質問とは、おとぎ話の『わらしべ長者』になぞらえたもの。
『わらしべ長者』は、ある貧乏人がわらを物々交換していき、最後にはお金持ちになるというストーリーだ。
わらを言葉に置き換え、相手の発言から一部のワード(わら)を切り出して質問(物々交換)するのが具体的な手法である。
②やまびこ
わらしべ質問より格段に難易度の低い質問がやまびこだ。
やまびこは相手の話しを疑問形に置き換えて返すだけである。
話題提供に苦手意識がある場合には取り入れたい手法だ。
③「大変ですね」
相手がネガティブな話しをした時に使えるのが「大変ですね」というワード。
特に日本人は苦労話を美徳とする傾向にあるので、「大変でしたね」と労いの言葉を欲しがるもの。
ネガティブな話題を出してくる相手には、「大変ですね」と共感の意を示すだけで相手が勝手に話しを続けてくれるのだ。
自分は気づかいのつもりで話題を提供しても、それは本当の気づかいではないのかもしれない。
3つの鉄板法則をうまく使いこなすことで、気まずい空気を変える事ができる。
本書ではきっかけの質問と話しの広げ方について、具体例も記載されているので読んでみて欲しい。
【scene10 情報を教えてもらったとき】
損する気づかい・「教えてもらったお店に行ってきました」と事後報告
得する気づかい:「このお店、今度使っていいですか?」と事前に聞く
相手から良い店の情報を得たら、実際に足を運んでみたくなるものである。
その場合、重要なのは事前にお伺いを立てることだと著者はいう。
なぜなら、人には心象(メンツ)があり、顔を立てるために順番が重要になってくるのだ。
しかし、本や映画などをすすめてもらった場合は真逆の対応が求められる。
良い本や映画などを紹介されたら、「今度買ってみます」ではなく、その瞬間にすぐ購入するのが鉄則だ。
本書でもscene10で著者が述べているが、私自身もこの鉄則の有効性は実体験として感じた。
以前、会社の先輩におすすめされた小説をその場でネット購入した事がある。
私の即座な行動を見て、先輩は驚きと感動の言葉を口にしていた。
誰しも自分のおすすめをすぐに試してもらえたら嬉しいものだ。
本書ではその後の結果報告のコツまで詳しく述べられている。
是非参考にしてみて欲しい。
【scene17 お礼の連絡】
損する気づかい・誰に送っても通じる定型文
得する気づかい・相手の言葉から得た気づきを入れてメールする
Scene10に通じる部分もあるが、scene17ではお礼の連絡についてポイントがまとめられている。
ビジネスシーンで食事をご馳走になったりお中元やお歳暮をいただく機会は多い。
そんな時はできればその日のうち、遅くても翌日の朝にはお礼のメールを送るのが鉄則だ。
ここで注意すべきはメールの内容。
「昨日はありがとうございました」「今後もどうぞよろしくお願いします」
このように、誰にでも使える定型文のみを送ってはいないだろうか。
誰でも送れる定型文ほどなえるものはない、そう著者は述べている。
定型文はあくまで型として、ここにたった一言でもオリジナリティを加えることで相手の心に響く一文になるのだ。
オリジナリティを出すには、相手の話しから得た“気づき”を加えることを著者はおすすめしている。
一文を添えるコツも紹介されているので参考にしてみて欲しい。
この他にも、scene別で社内の立ち回り方法や飲み会の作法、手みやげの選び方まで多岐にわたる気づかいが具体的に紹介されている。
ビジネスシーンだけでなく日常でも使えるものばかりだ。
また、本書の“得する気づかいコラム”も大変興味深い内容となっている。
著者が実際に感銘を受けた気づかいエピソードが満載であり、誰もが知る大女優の例も必見である。
「自分は気づかいをしているつもりなのにうまくいかない」
そう感じているならば、もしかしたらそれは“損する気づかい”なのかもしれない。
是非一度本書を一読し、“得する気づかい”の達人になられることを願う。
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