インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、主に電話やメール、オンライン会議ツールなどを使ってリモートで営業活動を行う方法のこと。従来の訪問営業(フィールドセールス)とは異なり、オフィスや自宅から顧客とコミュニケーションを取るのが特徴となる。
インサイドセールスの目的は、見込み顧客(リード)を育成し、購買意欲を高めること。これにより、最終的には営業担当者が契約を締結しやすい状態につなげてゆく。具体的な業務には、リードの発掘、初期接触、フォローアップ、顧客ニーズの把握、商品の説明やデモンストレーションなどが含まれる。
10年ほど前、外資系やスタートアップの企業さんとやり取りする中で、インサイドセールスの方に様々な形で接触する機会があったので、こういったポジションの人は今後増えてくるのかな?と思っていたが、案の定、現在では結構人気の職種になっている。
そう思って改めて、Google Trendでみると、2016年頃から徐々に市民権を得てきたのかなと思うが、どうだろうか。
インサイドセールス職のおすすめポイント
以下、インサイドセールスという営業職の魅力を書いてみたい。これから営業やマーケティングの仕事を検討している人、インサイドセールスを始めようという人に少しでもお役に立てれば幸い。
コミュニケーションスキルを向上させることができる
- インサイドセールスでは、電話やメールを通じて顧客と直接対話する機会が多いため、コミュニケーションスキルが飛躍的に向上する。リアルタイムでの質問や課題に対処することで、自然なコミュニケーションのスキルを身に付け、リレーションシップを築く力が養われる。
製品知識を深化させることができる
- インサイドセールス担当者は製品やサービスに関する専門知識を深めることが求められる。顧客と直接やり取りする中で、製品に関する質問に的確に答え、利点や付加価値を伝えるスキルが向上する。これは将来的なキャリアの発展にも繋がりやすい。
データ分析と戦略の構築の力がつく
- インサイドセールスでは、顧客のデータや行動を分析し、販売戦略を立てることが重要となる。データ駆動のアプローチを学び、効果的な営業戦略を構築するスキルを身につけることで、ビジネスの洞察力が向上し、競争力を強化できる。
新しい形の、営業というにふさわしく、このデータを活用した営業アプローチはインサイドセールスの大きな特徴と言って良いと思う。
柔軟性と適応力の向上につながる
- インサイドセールスは瞬時の変化に対応する柔軟性が求められる。市場の変動や競合情勢に対応する中で、素早く適応し、新しいアプローチやテクニックを取り入れることで、自らのスキルセットを強化できる。
営業プロセスの理解とその改善力がつく
- インサイドセールスを通じて、営業プロセス全体を理解し、改善の余地を見つけることができる。顧客とのやり取りを通じて得られた情報を元に、効率性や効果的なコミュニケーションのための改善策を提案し、組織全体の成功に貢献できる。
成果の即時感とやりがい
- インサイドセールスでは、顧客とのやり取りが比較的迅速であり、成果を即座に実感できる。成功体験を重ねることで、モチベーションが高まり、仕事へのやりがいを感じることができる。
多様な業界とクライアントの理解につながる
- インサイドセールスは様々な業界やクライアントと関わる機会があり、幅広い経験を積むことができる。これにより、異なる業界のニーズや市場動向を理解し、柔軟に対応できるスキルが身につく。
インサイドセールス関連のおすすめ書籍紹介
The MODEL 福田康隆
2019年初頭に出版された本。ERPのオラクルやSFAのセールスフォース、マーケティングオートメーションのマルケト日本法人社長を経て、現在独立してコンサルティング会社を経営されている福田康隆さんが著者。
セールスフォース等で行われている、高度な営業分業体制”The MODEL”についてが主たるテーマ。
”The MODEL”とは、インターネットとスマートフォンの普及によって変化した消費者や企業の購買行動に対応するために生まれた、「マーケティング→インサイドセールス→営業(フィールドセールス)→カスタマーサクセス」という分業体制の原点と言えるもの。
一連のセールスプロセスの中でそれらをいかに協働させ、成果をあげるかについて詳しく書かれている(営業を科学的にとらえる形で書かれている。)。
序文で投資家のアレン・マイナーが書いている以下の内容を噛み締めて読んでみたい。
ベニオフがオラクルから継承し、セールスフォース・ドットコムで磨いてきた科学的なマーケティング、パイプラインジェネレーション、デジタルマーケティングからセールスプロセスまですべてを管理する手法を完全に理解し、実行してきた人は福田さん以外いない。
昨今B2Bビジネスを中心に外資系やスタートアップに多大な影響を与えた、教科書的な位置付けになっている一冊である。
何でもかんでもこれによるのではなく、自社の状況に合わせて取り入れることが大切であるということは注意点として結構巷で言われているところである。
インサイドセールス 茂野明彦
2020年の12月に発売された本。セールスフォースを経て、ビズリーチのハーモス事業でインサイドセールス部の部長をされていらっしゃる茂野明彦さんによる本。
インサイドセールスが求められる時代背景・その立ち上げ方(組織づくり)・役割・KPI・ビジネスの進め方・マネージャーの役割等々、インサイドセールスの全体像について分かりやすく書かれている。
印象的な一文を引用。
インサイドセールスの最大の価値は「買い手の購買体験を変化させること」です。買い手の状況を想像し、求めている情報を準備し、最適なタイミングで届けることができれば購買体験はもっと素晴らしいものになります。
詳しくはこちら
インサイドセールス 究極の営業術 水嶋 玲以仁
2018年の年末に出た本。副題は「最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる。」
グーグル、デル、マイクロソフトなどの外資系企業でインサイドセールスの立ち上げ・運営に関わってきた著者によるインサイドセールス成功のためのノウハウ本。
インサイドセールスとは?から、組織の作り方、運営してゆくのに陥りやすいポイント等について書かれている。
セールスフォース、マルケト、ベルフェイス、HENNGEなどの事例も多数取り上げられているのでイメージが湧きやすい。
20年の豊富な経験に裏打ちされた具体的な内容で、参考になる部分が多い。
著者の水嶋さんはコロナ禍に以下の著作(実践・営業デジタルシフト)を出されている。内容としては、上の続編とでも言うものになっている。
デジタルインサイドセールス 吉田融正
2017年に出版された本。インサイドセールスのサービスを提供するブリッジインターナショナル社の社長さんによる本。
2000年初頭から欧米型のセールス手法だと思われていたインサイドセールスという概念を日本に紹介した先駆者のお一人である様子。
”デジタルインサイドセールス”ということで、AI等を活用した高度なインサイドセールスについても他に先駆けて語られている。現在の生成AIの隆盛を考えると、その先見の明は凄まじい。
冒頭のAI時代の営業戦略は「デジタルインサイドセールス」なしには語れない、という文章が語り書ける意味をしっかり読み取りたい。
2009年に書かれた、同著者のハイブリッドセールス戦略にも注目。
ハイブリッドセールス戦略とは、従来の対面営業(フィールドセールス)と、電話・Web・メールなどを活用する非対面営業(インサイドセールス)によって営業プロセスを分業化し、リソースを適正に配置するというもの
訪問しない時代の営業力強化の教科書 セールスフォース・ドットコム 他
タイトル通り、非対面商談が普通になった時代(コロナが収束して少し元に戻った感はあるが)の、「営業✕マーケティングの統合戦略」のあり方が、豊富な図表等を用いつつ、丁寧に書かれた本。
インサイドセールスが全体の中でどういった役割を持つのか、について理解するのにはもってこいだと思われる。
執筆陣にセールスフォースの関係者も多く、”The Model”など、セールスフォース由来の最新の営業コンセプトについても幅広く書かれていて参考になる。
一文引用:
日本の生産性向上の鍵の1つはインサイドセールスの未来が握っているといっても過言ではありません。 P166
インサイドセールスをテレアポと同種のものを考えている人もいるが、両者は大きく異なる。上記訪問しない時代の営業力強化の教科書にも、今後のインサイドセールスは、マーケティングの要素も強くもつようになる(P166)と記述がある。
これから有望な営業職種だと思うので、是非上記のような本を読んで具体的なイメージをつけることをおすすめしたい。
備考
インサイドセールスの実情を追った以下の記事がなかなか参考になりました。
セールスフォース・ジャパンのトップインサイドセールスは、どんな一日を過ごしている?密着してわかった「詳細な活動計画」
次はこちらもどうぞ: